
EZ-net@IT研究所 | 発行日:2026年10月
一、何が起きたのか
脆弱性は2件、CVSS スコアはいずれも 9.2/10(Critical)。通称 PHP2Shell。平たく言えば、攻撃者が細工したリクエストを1本送るだけで、ログインも、リンクをクリックさせる必要もなく、サーバーの制御を奪えます。原因は PHP 内部のメモリの扱いにあり、コードは2012年まで遡ります。14年間、既定の設定のまま潜んでいたことになります。
サイトのうち PHP を使う割合
公式スコア(Critical)
予防停止したサービス数
修正版は10月21日に公開されました。ただし、ここが要点です。
攻撃の試行は毎日続いています。セキュリティ各社のハニーポットは、公表の4日前にはすでに悪用を捉えていました。一方で、10月25日時点で、大規模な侵害成功は公開されていません。これは「無事」ではなく、「まだ間に合う」という状態です。
二、なぜ御社に関係するのか
3点、自社に当てはめて確認してください。
①御社のサイトは、まず射程内です。コーポレートサイト、問い合わせフォーム、会員機能——WordPress/EC-CUBE などの定番システムで作られていれば、それは PHP です。
②「直す」のはサーバー側なのに、その責任者が空白になりがちです。シェアードホスティング(Xserver、さくら等)は事業者が一括対応するので、告知を待てば済みます。しかし、自社で借りたサーバー、クラウド上の「昔だれかが構築した」サイトは、担当が決まっていないことが多い。今回、Palo Alto のファイアウォールの管理画面まで対象になりました。
③他社はすでに「止める」という形で意思表示しています。日本では当日211のサービスが予防停止——CoDMON、BASE、pixiv、niconico、Xserver、『ウマ娘』。欧州でも、オランダの行政ログイン DigiD、フランス内務省の地方自治体サイト、ドイツ連邦ITサービス(ITZBund)、フィンランド(Valtori)、デンマーク(Kombit)の公共サービスが相次いで停止しました。
注意したいのは、そのすべてが予防措置で、侵害が確認された事例は1件もないという点です。止めたのは攻撃を受けたからではなく、「確認」を待っていられなかったからです。
三、今やるべき3つ
①「PHPの責任者は誰か」を確定させる
何をするかサイト制作会社、ホスティング事業者、自社IT部門のそれぞれに書面で回答を求めてください。サイトはどの PHP バージョンで動いているか。修正版に上がっているか。いつ上げたか、上げた後に再起動したか。
経営の判断3つの質問のうち1つでも答えられなければ、それは誰も責任を持っていないという意味です。脆弱性そのものより、こちらのほうが心配すべき状態です。
②更新を「検討する」ではなく、日程に落とす
何をするか下表で自社の系列を確認し、修正版に上げる。
経営の判断8.1 以前は公式の修正版がありません。更新かリプレースが必要です。あわせて1つ覚えておいてください:現在サポートされている最も古い 8.2 も、今年12月31日でサポート終了です。どのみち必要になる費用なら、今回まとめて 8.3 以上に上げるのが最も安く済みます。
| バージョン系列 | 修正版 | サポート状況 |
|---|---|---|
| PHP 8.5 | 8.5.12 | 2027-12-31 まで |
| PHP 8.4 | 8.4.27 | 2026-12-31 まで |
| PHP 8.3 | 8.3.36 | セキュリティ修正のみ |
| PHP 8.2 | 8.2.35 | 2026-12-31 サポート終了 |
| 8.1 以前 | 公式版なし | 更新、またはディストリビューションのバックポート |
③分かる人に任せる。本番環境で直接いじらない
何をするか先週、ある顧客のサイトを PHP 8.3 に切り替えました。方向は完全に正しい。それでも、サイトは真っ白になりました。テーマの中の、何年もだれも触っていない古いコードが致命的なエラーを起こし、メンテナンスモードの画面すら表示されない状態に。さらにメールプラグインが通信できなくなり、テストメールも送れません。
なぜそうなるかPHP の更新は、数字を1つ変える作業ではなく、変更管理です。正しい順序は、完全バックアップ → テスト環境で主要フロー(ログイン/メール送信/フォーム/注文)を一通り → 業務の閑散時間に切り替え → テストメール1通で受け入れ確認。
経営の判断手順自体は複雑ではありません。ただし、どの段階にも分かる人が立ち会う必要があります。1つ飛ばせば、代償は一晩の真っ白なサイトと、翌日の顧客からのクレームです。
技術担当への補足3点:① php -v では直ったか分かりません——ディストリビューションは修正をバックポートするためバージョン番号が変わらず、パッケージの変更履歴で CVE-2026-109618/CVE-2026-109619 を確認する必要があります。② 更新後は Web サーバーとすべての PHP worker を再起動。コンテナはイメージを再ビルドして再デプロイ。③ 10月17日以降に露出していたサーバーは、「webshell を植えられた可能性」を前提に点検してください。
四、よくある質問(FAQ)
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